黄泉ヲ裂ク華【感想・レビュー】
【PS4・Switch・XB1】
ダンジョンRPG製作集団であるエクスペリエンス(チームムラマサ)最新作。最近はホラーアドベンチャーがメインコンテンツとなっていたが、数年ぶりに新作DRPGが発売された(シュバリエは円卓のリメイクなのでカウントしていない)。今回プレイしたのはPS4版。
1979年の東京に黄泉と呼ばれる巨大なダンジョンが出現。危険と引き換えにダンジョンから資源を持ち帰る「探鉱士」と呼ばれる人々が生まれる。
そんな中、弱小企業の「カサンドラ社」においしい話が持ち込まれる。同社の管理職である主人公は非合法な手段で社員を集め、ダンジョンに挑むも…
発生した「事故」によりダンジョン内に閉じ込められてしまうのだった。
主人公は男女選択可能だが、主人公専用として用意されているグラフィックは非常に少ない。
昭和の日本が舞台ということで、一般的なDRPGでは「種族」の部分が「経歴」となっており…
職業(このゲームにおける呼び方は職種)の名称も特殊なものになっているが、呼び方が違うだけで要するに戦士や魔術師、侍、忍者など一般的なDRPGと同じ。
ちなみにパーティーメンバー用の画像は個性の強いものばかりなので好みは分かれそうだ。
ストーリー部分は他のエクスペリエンス(チームムラマサ)作品に比べてかなりあっさりしている。特に人間のキャラとの絡みが少ない(ダンジョン内のNPCはほぼモンスター)なのはさみしく感じる。
ひたすらダンジョンに潜って戦闘やアイテム集めをしたい人にはいいかもしれないが、登場キャラも存在感が薄い感じだし、ストーリー部分が物足りなくてあと一歩モチベーションが上がらない。
3Dで描写されたダンジョン内はなかなか良い雰囲気。普通のDRPGと変わらない画面のように見えるが、実は今作には「花」と呼ばれるものを使ってダンジョン内の構造を変化させることができるシステムが備わっている。
1マスの壁には扉、1マスの崖や川には架け橋、壊れた梯子のある場所には新しい梯子をかけるなど、構造変化のシステムを駆使しながらダンジョンを探索していこう。
「花」は決まった場所にしか使用することはできないので、さすがに自由にダンジョンの構造を変えることはできないが、ただ単に隠し扉を探し回らなければならないよりはこちらのほうが断然面白い。
シンボルでエンカウントしたモンスターしか宝箱を落とさないのはエクスペリエンスの他のDRPGと同じだが、今作では自分の好きな場所にシンボルエンカウントを設置することができる。いくつも並べて置くこともできるので装備品集めがはかどるぞ。
一度たどり着いた場所まではマップから自動移動できるのは便利。ただし、階をまたいでの自動移動はできない。
戦闘は基本的な部分は普通のコマンド選択式バトルと同じ。
今作独自のシステムとしてスイッチブーストという要素がある。ブーストはスキルを強化してMP消費ゼロで使用することができる超電、ダメージを半減して状態異常を防ぐ耐電、命中・回避が50%アップしてそのターンに戦闘終了することができれば宝箱の取得数が増える神電、以上の3種類。
ブーストの効果時間はそれぞれ1ターンのみ。使用しないターンは使った順番に充電されていく。ガンガン押すか、温存するか、ブーストを使用するタイミング次第で戦闘の難易度は大きく変わってくるぞ。
ゲームバランスはDRPGの中では簡単なほうだと思う。ステータスを上げるアイテムもバンバン手に入るし、困ったらとりあえず武器・防具を強化しておけばなんとかなる。慣れている人にとってはヌル過ぎる内容だろう。
ボスが回復する、敵の魔法攻撃が強いのはいつものチームラって感じがする。ボスの回復頻度は過去作に比べて低くなっているように思えたが、ボスの回復によってゲームバランスを調整するやり方はやはり賛否両論かと。
登場する装備品の数が多いのは良い点。円卓の生徒(シュバリエ)や剣の街の異邦人に出てくる武具も名前を変えて登場するのでファンとしては嬉しいところ。ただ、ゲーム自体が簡単すぎるので強い装備を手に入れた時の喜びは半減しているかも。
所々にアンバランスというか、首をかしげたくなるような仕様があってイマイチ遊びづらく、熱中しづらい。
拠点に帰らないとメンバーを復活させる術はないにも関わらず、敵の即死攻撃・即死魔法の成功率が高いのは面倒。復活のコストは低いが戦闘が終わって帰るまで復活できないので鬱陶しい。
キャラクターの画像が尖ったものしかないうえに武器を持ってしまっているのでキャラメイクの幅が狭い。この画像だとこの経歴、この職業みたいなのがほぼ固定されてしまっていてプレイヤーの想像力で自由にキャラを作ることができない。
例えば自衛隊員のキャラ画像だとサバゲーマニアの女子大生という設定でもいけるが、大きな武器と盾を持っているのでクラスは戦術か防術以外ではかなり不自然になってしまう。もっと汎用性のある画像を用意してほしかった。
攻略するにあたりほぼ絶対に必要なスキルが結構あるため、結局のところパーティーの構成や誰をどのように育てるか(専門or総合のどちらに昇進させるか)の自由度は実は低いと言っていいだろう。
プレイヤーが考えて選択できる幅が広いほうがゲームとして面白いと思う。この作品はゲーム性の点でちょっと物足りない。
やはり一番の難点は瀕死のパーティーメンバーをダンジョン内や戦闘中に復活させることができないことだろう。この仕様のために誰かが死んだ瞬間に一気にやる気がなくなる。特にボス戦やイベント戦の最中に即死呪文や首切りを食らうとクッソ腹立つ。
コア向けのジャンルをライト寄りにしようとした結果、色々と物足りない感じになってしまったのかも?アップデートや完全版での追加・修正の内容次第では良作になるポテンシャルはあるが、現状では佳作の評価が妥当か。
ダンジョンの構造を変えていきながら攻略する探索やブーストを使って戦う戦闘システムはなかなか面白いが他の点では不満も割と多い。難易度が低すぎるし、自由度が低く育成も選択の幅が狭いのでゲーム性は物足りない。ストーリー部分も今一つで、キャラ絵に汎用性がなくキャラメイクの自由度も低い。それでも普通に遊べるしDRPGが好きならありだと思うが、死亡したキャラを戦闘中&ダンジョン内で復活させる術がない仕様はマイナス点に感じる人が多いだろう。全体的に初心者・ライトゲーマー向けに寄っている感じなのでDRPG入門には良いかもしれない。ただし、世界観はかなり賛否分かれそうだ。
スコア:69点(100点中)判定:佳作
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あくまでも個人の感想なのであしからず。